モラルハザードの報道
企業の不祥事が毎日のように報道されていますが、それらは必ずしも企業体質そのものだけが悪いということでもありません。
突き詰めていけば企業組織のありかたのどこかにほころびがあるというふうに拡大的に解釈することもできなくはないのですが、企業の不祥事のかなりの割合となっているのはそこで勤務する従業員個人のモラル・ハザードの問題です。
金融機関や会計責任者が、帳簿への記載やチェックする権限があるのをよいことに、会社のお金を勝手に引き出したり自分の口座に入れてしまったりというようなことは、組織というよりも個人責任者が自覚を持っていなかった事例と言えます。
つい先日も2013年10月発表のニュースとして、大手家電量販店のヤマダ電機で、店長クラスの管理職の多くが社内の商品や現金を多量に窃盗していたことが発覚した事件がありました。
この数字は2013年1~8月までの間で5200万円以上にもなるということなので、万引被害どころではない規模の窃盗犯罪です。
このような一定の権限を持つ従業員が犯罪に利用をするといったケースはこれまでも多く見られてきました。
内部の従業員だけでなく、2004年に起こったヤフーBB個人情報大量流出事件では、ヤフーBBの代理店や、当時契約社員としてデータベースを取り扱う作業をしていた個人が勝手に内部の個人情報を抜き取り、外部に漏らされたくなければ金銭を支払えという恐喝を行ったということがありました。
個人の考えによって起こる犯罪
これらに共通しているのは、内部チェック機能というよりもその人個人の考えによって起こした犯罪であるという点です。
従業員や契約社員の不祥事を防止することは企業にとっては時に生命線ともなることです。
いくら内部統制に力を入れたとしても、それぞれの業務を行う場合には必ず責任者をおかなくてはいけませんし、チェックを過剰に行うようにすることで、むしろ業務の遅滞を招くようなことにもなりかねません。
業務改善を行う場合には、まずこのような従業員の不祥事を防ぐために社内全体のモラルについての啓蒙を行う必要があります。
そのためには罰則の強化ということも必要ではありますが、それ以上に何をどうすることが罰則の対象になるのかということを牽制的に示すことも大切です。
日本の企業においてはあまり相手を疑いすぎるのは悪いとばかりに、業務のブラックボックス化もやむなしという考えをする人もいますが、将来的なリスクを考えれば役職に限らない従業員教育は不可欠です。